シオタの塩分過多な日常

シオタです。「しょっぱい自分が、塩分過多な毎日をどう過ごし、いかに楽しく生きていくか」がテーマです

見えないけれどもおるんだよ。さながら、妖怪の如し!


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今日も社内を飛び交う、様々な”仕事”をしている人たちの声。

 

みんな思い思いの形で、思い思いの”仕事”をしている。

 

俺の耳には、あまり意味を伴った言葉には聞こえない。


誰の声もが、ただの独り言のように聞こえる。


実際、PCの画面を見ながら一人で会話をしているヤツもいるくらいなので、実際に意味の無い言葉を発している人間もたくさんいるのかもしれない。

 

そんな中、一人の若手が、提出してきたファイルの内容を早急に確認して欲しいと求めてきたのだ。


理由を聞くと、「2か月後に実施するイベントの参加企業から、参加が可能かどうか回答を求められてるんです」という事だった。このファイルの内容に特に問題がなければ、俺の権限で承認が可能なのだ。
当初設定していた期限よりは早めだけど、それなら、と思って早速送られてきたファイルを確認した。

 

ところが、

 

その内容がとんでもないものだった。
なんと、そこに記載してある大量の文章を幾ら読み込んでも、内容が無いのだ。
これは、駄洒落ではない。
本当に内容が無いのだ。

 

本来、そのファイルには、目的に沿っていて尚且つ客観的事実に基づいた内容が記載されていなければならないのだ。とは言え、作成がそれほど難しい物ではないのだ。

端的に言えば、俺より上の人達を納得させるための言わば形式上の文書が揃っていればいいのだから。

 

にも関わらず、目的に沿った内容は何一つ記載されておらず、客観的な事実に基づく内容もほとんど記載されていない。

その替わりに、とてつもなく主観的な意見と憶測に片寄ったモノがつらつらと意味の無い言葉の羅列として、ただただ並んでいただけなのだ。

 

彼には、とりあえず聞いてみた。

 

シオタ:「内容確認したけど、これ出す前に確認した?」
若手:「はい。他の人にも聞きながら作ったんでバッチリです」
シオタ:「そっか。とりあえず、この内容のままだと承認できないよ」
若手:「え?でもできるだけ早めに出したいんですが、この後外出で直す時間が・・・」
シオタ:「じゃあ、今回は俺がやっとく。今後はやらないけど」
若手:「ありがとうございます」
シオタ:「今後はこういう事にならないように」

 

ということで、俺が一から調べ直して作成しなおしたのだ。当然、本来であればやる必要のない仕事だ。


だけど、今日やっておかないとせっかく参加予定の企業がポシャってしまう可能性があったのだ。


であれば、他に直せる人間もいなかったので仕方がない。


今日の時点では、これが最も効率的なフォローだったのだ。そう自分に言い聞かせて、なんとか最小の時間で済ませる事ができた。

だけど、これは元々必要のなかったはずの仕事だ。

つまり、マイナスを0にしただけの仕事だ。
実際には、なんのプラスにもなっていないのだ。
ただ、ほっておいたら会社が受けたかもしれないマイナス分のダメージを帳消しにしただけ。
いわゆる、ディフェンスなのだ。
ダメージを回避したディフェンスなのだ。
ただし、このような場合のダメージは自爆によって受けてしまいそうになったダメージだ。


道を歩いていて、気を付けていれば絶対に踏まないような石ころをうっかり踏んづけてしまって、足を挫きそうになったけれども、なんとか足首へのダメージを回避して、そのまま何事も無かったように歩いていく感じだ。

もちろん、誰もこの帳消し分のダメージには気づくことはない。

 

こんな、マイナスをゼロにして、自爆のダメージを回避するという仕事を、俺はこれまでに散々やってきた。
もちろん、自爆だけじゃなく、外からの攻撃によって受けそうになったダメージを回避するという仕事も散々やってきた。


これによって、俺の能力は飛躍的に上がり続けている。
自分で言うのもなんだが、これは客観的事実としてその通りなのだ。


だからこそ、会社内で”特命係長”的な役割が、いつのまにか、俺が望むと望まざるとは関係なく、回ってくるのだ。

 

「マイナスをゼロにする」
つまり、実際にはプラスを生んでいるはずなのだ。
だけど、この仕事は周りに気づかれることはない。
まさに、俺にぴったりの、目立たない役割だ。

 

まるでデビルマンのように、誰も知らない知られちゃいけないのだ。

皆の周りにも、誰にも知られないうちにひっそりと、マイナスをゼロにしている、そんな役割を担っている人がいるのかもしれない。

 

だけど、その人の存在に気づく日が来ることは、無いのかもしれないよ。

 

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