みんながみんなを悩ませてるナリ
「いつもの学校のいつもの教室あのこは今日も元気だね」
そう歌っていたのはキテレツ大百科の主題歌だった『すいみん不足』という歌だ。
キテレツ大百科の主題歌もエンディング曲も強烈に記憶に残っている歌が多い。40歳をとうに超えたのに、小学生の時に見ていた歌を今でも空で歌える程強烈に頭に残っているというのは、この曲を選んだスタッフの人達ってなかなか凄いんじゃないかなと思う今日この頃。
だけど、今日の話題はキテレツ君の話でもコロ助の話でもない。
いつもの如く、会社での仕事の話なのだ。
だけど、特別な何かが起きたわけではない。
ただ、何度もやってきているイベントの運営が、何年経っても何回やっても、全くと言っていいほど向上しないのだ。
“全く向上しない”と言ったら言い過ぎになるのは理解している。
全く向上していない事は無い。多少は向上しているのだ。何しろ、数年間同じイベントを毎年何回も繰り返しているのだから。そりゃあ、多少は向上している。
だけど、向上しているのは“多少”なのだ。あくまでも最低ラインを割らないというだけの話だ。
この問題については、これまでにも何度も指導をして、その度にツールを作って、丁寧に解説をして練習をして、ようやく今では本番での運用もうまくいくようになってきた。その上で、現在のクオリティなのだ。ただ、さっきも書いた通り、最低ラインは割っていないのだ。
そして、どうやら、彼らの中では「最低ラインを割っていない」というその事実が、かなり良い方向に解釈されているようなのだ。それが、イベント後の振り返りを行うと各スタッフから出てくるのだ。彼らは、この状況に満足しているらしいのだ。
こうなると、もはや打つ手は無い。
これまでずっとこの仕事に携わってきた彼らの上司である俺からは一度も「これで完璧だ」という話はした事が無い。それどころか、もっとハイクオリティのモノを提供できるように工夫をしていこう。具体的にはこういう所を目指すべし。その為に何をするかアイデア出して毎回試していくように、そう話をしていたのだ。
それに対して彼らのリアクションは、
「我々は既に、功が成った」
と、ありとあらゆる行動で、まるで列海王のような反応を示すのだ。
そのお陰で、彼らのモチベーションは高い。
この事について、もはや、上司の立場からダメだしはしない方が得策だ。
何故なら、彼らのモチベーションを俺の関りで高めようとしてもそれはできないからだ。それであれば、彼らが彼ら自身の行動によってモチベートをかけられるならそれを阻害するのは得策ではない。
そうして、彼らは今日も元気ハツラツとしながらこのイベントに臨んでいた。
「大成功だったな!」なんてお互いに声を掛け合いながら帰路につくその姿を、俺は毎回後ろから眺めている。
そんな時に、冒頭の『すいみん不足』が頭の中に流れるのだ。
「いつもの会社のいつものイベント彼らは今日も元気だね」
どうやら睡眠不足が原因という単純な話では無さそうだ。
彼らに不足しているのは何なんだろうか。