シオタの塩分過多な日常

シオタです。「しょっぱい自分が、塩分過多な毎日をどう過ごし、いかに楽しく生きていくか」がテーマです

このゲーム本当に始まってるの?

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ウチの会社の最若手Sさん(20代前半・女性)がいつもこんな事を言う。

 

「わたし、成長したいんです!」

 

これ自体はとても素晴らしい事だと思う。
是非、大いに成長して欲しい。

 

Sさんは、入社して半年以上が経つ。
ウチの会社には転職して入ってきた。
前職は大学新卒で入って2年ほどで退職したそうだ。
転職理由は、本人曰く「成長したくて。前の仕事では自分がこれ以上成長できないと思って~」だそうだ。

時折、本人に『成長』について話を聞くと、必ずこんな答えが返ってくる。
「前よりは成長したと思うんですけど…どうなんですかね?わたし成長してるんですかね?」


正直な話をすると、Sさんは、入社してからの時間と取り組んでいる仕事の内容からすると成長しているとは言い難い。
これまでに入ってきた他の中途入社と比べてもそれ程成長を感じるわけでもない。
だが、全然成長していないかというとそう言うわけでも無い、のかもしれない。
当然の事だけど、中途であっても新入社員研修は実施されているし、他の社員達と何ら変わらないステップを踏んで仕事に従事しているのは言うまでもない。


とは言え、「成長したいんです」と常日頃から言っている人の成長度合いとしては、
本人としては恐らく物足りないと感じても良いはずの成長度合いに見える。

これがもし、俺一人の個人的な見解であれば大いに間違った判断かもしれないが、
Sさんの直属の上司や、他の部署で関わりのある上長や、会社における判断としても、
彼女が成長しているとは言い難いという判断なのである。

 

だけど、この「成長がほとんど見えない」という事実をもってして「Sさんは成長していない」と断言して良いのか。
もちろん、会社として役職者に登用できるか?という問いであれば「登用できない」という回答になるが、果たして本人は自分自身について「成長していない」と本当に認めているのだろうか?

 

答えは「否」だろう。


なぜならば、こんなに毎日のように「成長したい」という言葉を自分で言うのだ。
そして、転職の理由が「成長したくて」である。そんな人が、「自分は全く成長できていない」という自覚があるとしたら、既に退職の意志を示している、というか、とっくの昔に辞めているんじゃないかなと思う。だけど、現状では、ウチの会社に来る前から思っていた事を今もまだ思っているという事。


つまり、Sさん自身は「成長している実感」を持っているんじゃないだろうか。
若しくは、「成長している実感」というほどの強いものじゃなくても、何がしかの「成長したい欲求」を満たす手ごたえを感じているのは間違いないだろう。

という事は、本人の中ではやっぱり「成長している」のだ。
紛れもなく。

 


こんな事を考えていてふと思ったのは、いつもの恐ろしい内容だ。

 


Sさんが言っている『成長』という言葉の意味というか概念そのものが、俺や俺の仲間たちが持っている『成長』とは全く異なるのかもしれない。

もしかしたら、Sさんが『成長』だと受け止めているモノの正体は、いわゆる動植物の「成長」と同列の事を言っているのかもしれない。
どういう事かというと例えば、「時間が経過した分だけ伸びた」「半年経って大きくなった」「狩りができるようになった」とか。


これだとわかりづらければ、つまり、「時間の経過と共に必ず出てくる『慣れ』のような事」が自分の身に起きている事を『成長』だと捉えてるのではないか?

つまり、同じ時間その場所に身を置いていればほとんどの人に必ず起こりうる出来事を指しているのではないだろうか?というそんな予感がしているのだ。

そして、この予感を仮説としてSさんの仕事ぶりを見て、Sさんのこれまでの『成長』に関する言動を検証すると、この仮説がとても信憑性をもってくるのが、だんだん見えてきてしまうのだ。


そもそも本人自身が『成長』という言葉をどんな概念で使用しているのか定義はしていないはずだ。

こんな風に、みんなが使う言葉の定義について非常に曖昧なモノを、使う本人自身がその曖昧さを認識しないまま使う。さらに、使うだけじゃなくて、その定義すらしていない非常に曖昧な言葉を、あたかも自分が目指す目標や自分の価値判断基準のように使用しているつもりになっている。

そんな、恐ろしい事が起きているのだ。

 

この状態が続くとどうなるのか?

 

適当に『成長』を感じて、適当に満足するのか。

それとも、

何をやっても『成長』を感じることなく、ずっと満足いかないのか。

 

いずれにしても、
俺や会社が考える意味での『成長』は絶対に訪れず、ただ時間ばかりが経過していく。

そんな風に、Sさんの話を聞いて、仕事ぶりを観察してみて、思ったのだ。

 

 

欲しいモノを手に入れる為には、自分が欲しがっているモノが本当にそのモノなのかを確認するところから始める必要があるのかもしれない。